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2021.09.22 鵜沼 一郎 |
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美濃国幽深紀行 其の二 |
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美濃国の深山二日目……。深き森の緑の天幕を通し、脆弱に輝く太陽に照らされて、朝ぼらけの沢はキラキラと輝いていた。少し霞みがかった大気を照らすその幾筋の光は、深々として濃厚な沢の景色を、より一層艶やかに彩る。
初日同様に、いちいちその景色に見入ってしまうボク。ボクだけだろうか? 山釣りに出ると、釣りに来たのか、川を愛でに来たのか曖昧な世界に陥る。鼻の穴を大きく広げて、森の木々や草花が発する香りを吸引しつつ、深く婉美な情景にいざなわれると、ある種トランスに近い感覚に陥るのである……。なんとなくであるが、超自然的存在と交信して、少し森や沢と同化したかのような気分になれるのだ……。
それはとても心地よき世界で、「あ〜釣んなきゃ! 釣んなきゃ!」という釣り師の哀しき先天的固定概念から解放された領域で、ちょっぴり虚ろで幸せな無の境地≠セったりするのだ。美し過ぎるこの流れは、そんな虚ろで幸せな時間に満ちており、ボクは、ゆるゆる、のんのん、ずいずいと、自由方便な時間を満喫したのだった。
ハートに棘がないからか、キャストからも殺気が消え、ラインを介したルアーには、一切の穢れが無くなる……。そんなときに来るのである。凄く良いのが……。落ち込みから続く少し緩いポケットに入ったミノーをツン! ツン! とピックアップ気味にトゥイッチすると、コン! と来てゴン! となり、ググググググググググ〜! となってグリングリン! とローリングが始まった。
「あ、やばい……!」惚けていてもスイッチが入れば、躯は反応するもので、ボクはその須臾、木から木へ映るサルのように、崖と崖を飛んで行くカモシカのように動き、ロッドをいなしてラインをたぐる。詰め寄るそれのサイズに一瞬狂喜したが、割り方冷静にネットイン!メジャーをあてるとそれは33センチの立派な尺上イワナだった。
山の神様に感謝しながら、端麗な流れにそれを返したボク。今一度、流れの景観をスローに眺めながら、森の木々や草花が発する香りを吸引すると、ほんおりと甘い香りがして、その刹那、ボクは眉の中に包まれたような安らぎを感じた。沢にはカジカの声が響いていた……。良き釣りと出会いを。ラヴ&ピース。
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使用タックル |
ライン:APPLAUD GT-R トラウト エディション 5Lb ロッド:DAIWA ロッド:シルバークリーク AGS 511L リール:DAIWA ルビアス FC LT2000S ルアー:DAIWA ドクターミノー ジョイント 5S 。シルバークリーク ミノー50S。シルバークリーク ミノー 61S
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295 296 297 298 299 |
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